公正証書とは,公証人が作成する文書のことです。このように言っても一般の方には何のことだか解らないと思います。
通常例えば契約書を交わす場合,普通は,当事者つまり私人間で,契約する法人あるいは人(法律的には自然人と言います。)の数に応じた通数の契約書を作成し,それぞれに署名押印あるいは記名押印し,それぞれがこれを所持保管するという形態で行われます。しかし,これは所謂私署証書と呼ばれる文書です。
これに対し,公正証書は,法務大臣によって任命された公証人が契約する当事者から契約内容を聴取し,「・・・契約公正証書」という文書を作成し,これを閲覧場合によってはさらに読み聞かせて内容に間違いがないかどうかを確認させた上,間違いがなければ契約当事者に署名押印させ,最後に公証人が署名押印するという方法で作成される文書です。
ですから私人間の契約であっても,公務員である公証人が作成する文書ですので,いわゆる公文書になります。
それでは私署証書と公文書である公正証書は,具体的にどの様な違いがあるのでしょうか。
証拠としては同じだと思われるかもしれませんが,信用力の強さが異なり,裁判つまり訴訟になったときに,その違いが顕著に表れます。
例えば契約書が作成された後,当事者の一方がその様な契約をした覚えがないと言い出し,裁判で契約書が真正に作成されたものではないと主張してきた場合,それが私署証書のときは,契約書が真正に作成されたものであると主張する者が,真正に作成されたものであることを証明して初めて証拠として採用されるのです。
これに対し,公正証書の場合は,公文書ですので真正に作成されたものであるとの推定がなされ,真正に作成されたものではないと主張する者が真正に作成されたものではないことを証明して,当該公正証書を証拠から排除することができるのです。
分かり難いかもしれませんが,簡単に言えば,作成について当事者間で争いがあれば,私署証書は,裁判で証拠として採用されにくく,公正証書は,証拠として採用され易いということです。